小児科の最新情報

       ここには 最新の小児科医療情報を掲載します。
       普段 診察室でよく聞かれる質問や、最近の話題について
       正確に わかりやすく記載します。

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       お時間を頂戴することがございますので ご了承ください。


目次    1. 虫除け(防虫剤)スプレーの危険性について   
      2.  麻疹・風疹の予防接種制度がかわります    
     
3. 保湿剤について
     4.  アトピーニュース (1)衛生仮説について



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1.虫除け(防虫剤)スプレーの危険性について      05・8・30

     夏には外遊びをすることが多いですね。キャンプなどアウトドアは、大人もこどもも大好きです。
     そこでの困りごとのひとつが 「虫さされ」。こどもの皮膚はデリケートで真っ赤に腫れて、かゆみの
     ために眠れず、掻きすぎてこんどは「とびひ」なんていうケースもあります。
     そこで 登場してきたのが、スプレーやティッシュタイプの虫除け剤です。この薬 中身はどういうも
     のかご存知でしょうか?
     ディート (N,N-diethyl-meta-toluamide)といわれているものです。毒性が低いとされ世界中で使わ
     れています。
     このたび 
国民生活センターでは この薬剤の利用状況について調査し、結果が公表されました。
 
     この結果をまとめると、
     虫除け剤はこどもで多く使用され、屋外で遊ぶ時など週3回以上使われることが多い。
     さらにスプレ-タイプのものが最もよく使われている(58.5%)。製品中のディートの濃度は多様、
     スプレータイプのものは薬剤の付着効率が悪く、皮膚に一定してつかない。また噴射粒子は容易に
     肺の奥にまで到達するほどの小さい粒子であった。

     この薬剤についての危険性については 中毒の報告などは見られないものの、毎日多量に使用し
     た場合、一般的に安全とされる4g/週を超える可能性がある。
     というものです。

     子供が使用するものにはできるだけ化学物質を避ける
     べきであると、私は考えています。
     とくに乳幼児にスプレー式のものが用いられた場合、皮膚への
     刺激や粒子を吸入する可能性が考えられます。
     付着効率もよくないとされており、私の意見として、
     1.スプレー式はこどもには使わない。
     2.使用するなら、ティッシュ式のものを使い、
       使用頻度を減らす。
       
     などの対策が必要ではないかと考えています。

                                              このページの先頭へ戻る


2. 麻疹 風疹の予防接種制度が変わります   05・9・15

     今まで麻疹(はしか)と風疹(みっかばしか)の予防接種は別々にそれぞれ
     生後12〜89ヶ月の間に行われるべきとされ、麻疹に関しては1歳のお誕生日を迎えたら
     速やかに(15ヶ月まで)、風疹はその後36ヶ月までの接種が勧められてきました。
     しかしながら麻疹に関して言えば、接種後時間がたつにつれて抗体価(感染に抵抗する
     力)が低下してくることが知られ、現実問題として予防接種をしていたにもかかわらず 
     中学生以降になって麻疹にかかるということが見られるようになりました。
     このため 抵抗力が低下する前にもう一度ワクチンを接種することで抵抗力を持続させる
     こととし、来年4月から規則が変わることになりました。

この事は長年 私たち小児科医が希望してきたことで、2回打ちによってより
予防効果が高まり、流行が抑えられるものと期待しています。
しかしながら 今回の規則の変更には 大きな問題が一つあります。来年4月
以降はこの2種混合(麻疹+風疹 ミールビックという名前がつきました。)
以外の麻疹や風疹単独ワクチンは自費負担になってしまったことです。
たとえば、来年2月にお誕生日を迎え、めでたく麻疹のワクチンをうった子どもさん
の場合、3月に風疹を受ける予定が、インフルエンザで高熱を出し受けそびれ4月
      になってしまったとすると、まだ2歳台で あるにも拘らず風疹は自費接種になってしまいます。
      いままでなら7歳まで無料で受けられたものなのにです。 
      移行処置が設けられ、漏れがない様にされるべき問題です。
      また 単独ワクチンをうった場合、2期の5〜6歳での2回目の接種が公費では認められない
      というのも おかしいです
      早急に 今年からでも小学校入学前の2回目の麻疹、風疹混合ワクチン接種が行なわれる
      べきだと思います。


                                               このページの先頭へ戻る    


3、保湿剤について      06.1.5 
               
この文章はクリニックニュース No2に掲載したものに加筆しました。

  寒い冬がやってきました。赤ちゃんの肌は大変デリケートですね。この時期乾燥肌を心配される方もたくさんいらっしゃいます。そういうときに使用されるのが保湿剤です。アトピー性皮膚炎などの肌の弱い方も日ごろのスキンケアとして保湿剤は欠かせません。
現在使用できる保湿剤には

1.ワセリンなどの油脂成分
刺激性がなく皮脂膜の代用ともなり皮膚保護作用があります。しかし吸水性がなく、水分の蒸散を防ぐのみです。作用は表在性でべとつきやすいという欠点があります。

2.尿素軟膏
角質の水分保持能力を高め、表面をやわらかくします。痒みを停める効果もありますが、傷があると染みることが欠点です。市販薬の多くにこの成分は含まれています。  例 ケラチナミン

3.ヘパリン類似物質(ヒルドイド) ヒアルロン酸など
水分子を吸着し保湿能力は強力です。ヘパリンは血液の凝固を抑える効果があるため、出血部、びらん面には使いません。ヒアルロン酸は健康保険が使えません。

4.セラミド類似物質
セラミドは角質細胞間の脂質で水分保持能を補う天然保湿因子です。バリア機能を高める働きがあります。
1〜3と異なり、この成分を含むものは健康保険が使用できません。薬局で販売されるものを購入していただきます。
キュレル(花王) AKマイルドローション(ロゼット)

これらのいずれが最も最適なのか?専門家の間でも意見が分かれています。ドライスキンには個人の肌の質、季節環境などの多くの因子が関与していることや客観的に保湿性を評価する検査法に乏しいことも理由の一つと思います。結局 子ども1人1人にあった薬を探す必要があるのでしょう。そこで私のクリニックでは方針として 保険適用のある薬剤(ご家族への負担も考えてのことですが)を使用しています。そして満足のいく効果が得られなかった場合には変更していくという方法を取っています。
ここで大事なお願いは、毎日忘れずに薬を塗るということです。塗らない薬は効きません。中途半端な塗り方で効果なしと判定した場合、時間の浪費にもなります。その間お子さんは痒みに悩むことになります。お母さんは子どもさんの肌のことを一番ご存知です。お母さんの協力なくして子どもさんの改善はありえません。


4 アトピーニュース     
2006.SEP

アトピー性皮膚炎の原因について。
アトピーの語源は「奇妙なこと」を意味するギリシャ語atoposに由来します。さらにatoposは同じギリシャ語の、atopiaと関係しaは否定の接頭語 topiaはユートピアのtopiaと同じで場所を意味します。Atopiaは「場違いな」や「とらえどころがない」という意味があります。
             {語源由来辞典}より
 つまりアトピー性皮膚炎とは 奇妙な皮膚炎ということになります。昔の人にはアトピーとは「よくわからないもの」であったのです。しかしながら医学の進んだ現代でもアトピーの原因はまだまだよくわかっていません。現在どこまでわかっているのでしょうか。
 アトピー性皮膚炎の発症要因には遺伝的要因と環境要因の両方が関与していることが、多くの疫学的研究で明らかになっています。遺伝的要因に関しては、兄弟や親子でアトピー性皮膚炎が続いて発症することがよくみられることをご存知の方も多いでしょう。現在精力的に遺伝子の検索、研究が行われてはいますが、残念ながらまだ明らかな関連遺伝子の同定はされてはいません。   
 環境要因についても多くの研究が見られます。そもそも人は環境中に存在する微生物や毒素の攻撃を常に受けており、食事や薬というかたちで様々なものを積極的に摂取し、それに付随する形で多くの化学物質(かつては地球上に存在しなかった多くの合成物質)を体内に取り込んでいます。私たちが健康でいられるのは、これらの物質を見つけ出し、体外に排出する機能を持っているからです。この仕組みを免疫といいます。
 免疫にはリンパ球やマクロファージという血液中の細胞が直接異物(微生物)を攻撃する細胞性免疫と、リンパ球が異物を攻撃するように個々に作り出すたんぱく質(グロブリン)の作用による液性免疫があります。この免疫はいったん自分にとって有害と認識した物質を記憶しておき、この異物が再度体内に入ったときに侵入を阻止して体を守ろうという反応を引き起こします。食物などは本来私たちが生きていくうえで必要不可欠なものです。家の中のダニにしてもどこの家にも多少はいます。しかしながらアトピーの患者さんは、これらの物質に反応して湿疹や喘息といった症状を起こしてしまうのです。
 つまり正常な免疫反応が混乱して、激しい 過剰な反応を起こすようになってしまったのです。このようなことが生じるようになったのは なぜでしょうか? アレルギーの患者さんの数は確実に増加しています。上田らの報告では 3-15歳のアトピー性皮膚炎の有病率は1981年には2.8%でしたがその後階段状に増加し、1992年に6.6%に増加したとしています。その後は頭打ち状態で現在の有病率は調査法や地域のよって差はあるものの 大体10%位とされています。このように増加した原因として

1.抗生物質などの使用が進み、細菌感染症に罹患しなくなりました。このためにアレルギーを起こす、免疫系が
強くなってしまったという説。(衛生仮説といいます)
2.食品や生活環境内に存在する化学物質の中に免疫能力を落としてしまうものがあり、低下した免疫力を補うために生体防衛としてアレルギー反応が起こるという説。
 衛生仮説について考えて見ましょう。本年の小児皮膚科学会でも、この説の妥当性のようなものが示されていました。
 モンゴルの遊牧民の生活環境はきわめて劣悪です。体も洗えていないし、パオ(ゲル)といわれるテント生活で、中はほこりだらけです。しかしながらアトピーの子どもはいません。一方同じ国でも首都のウランバートルでは生活スタイルが欧米に類似してきました。ここの子どもたちの中にはアトピー性皮膚炎がいるそうです。
 私たちは アトピーの治療のために清潔にするように口をすっぱくして話しますが、感染症の多い環境ではアトピーが出ないということは確からしいと思われます。しかしながら現在、われわれは昔の 不潔環境には戻れなくなっています。遊牧民のような生活はできないでしょう。抗生物質にしても多くの感染症からわれわれを救ってくれたことは事実であり、小児期、乳児期の死亡率が世界一にまで低下したのはこのような医療の進歩のおかげともいえます。(いずれにせよ過剰投与は考え物です)
 衛生仮説はバランスが大事であることを私たちに教えてくれています。免疫のバランスを保つことです。長い年月をかけて人が獲得した細菌や寄生虫に対する力をどう賦活するのか、逆に過剰に反応するようになったアレルギー系をどう抑制するのか、このようなことが可能になったときにアトピーが「奇妙なもの」でなくなると思います。
次回は化学物質について考えます。